いざ地獄へ(「虎に翼」「さよーならまたいつか!」感想)

朝ドラを久しぶりに見ている。

 

本当に心を打たれた映像作品は、わかりやすく影響されるから「あっこいつアレに影響されたな?」と思われるのが嫌で、あまり周りの人に話さないようにしているのだけど、今回は言わずにいられない。

 

 

一番印象的だったのは、主人公の寅子とその母はるが地獄についてそれぞれ語るところ。

 

寅子は結婚を薦める母に自分の気持ちを分かってもらえなくて半泣きになりながら、この社会を生きていくうえで結婚することが正解なんだろうけど、わたしにとってそれは地獄だと言う。母はるは、今結婚すれば間違いなく幸せになれるのに地獄を見る覚悟はあるのかと寅子に問う。

 

このシーンについては主題歌を担当した米津玄師さんもインタビューで語っていた。

 

「人が宣う地獄の先にこそ わたしは春を見る」

 

地上波に流れない2番の歌詞でここを使うのか…!と初めてフルで聞いたときに泣いてしまった。米津さんがここを歌詞に使ってくれたことが嬉しかった。

 

1週目からこんなに素晴らしくてこの朝ドラはどうなってしまうんだろうと思ったら、2週目以降も期待以上だった。

特に3週目はそれぞれの登場人物に地獄があるんだなということを描いていて、お見事!としか言いようがなかった。

 

専業主婦の孤独と地獄。由緒正しき華族の娘の地獄。家事をしながら学ぶ同居主婦の地獄。留学生の偏見と地獄。生理が重すぎて大好きな学校を休む地獄。

 

「つらくない人間はいない。ここにいる誰も弱音なんて吐かないだろ」

「弱音なんか吐いたところで何も解決しないだろ」

 

そう言うクラスメイトのよねさんに寅子は「はて?」と首を傾げる。

 

「みんなつらいならわたしはむしろ弱音吐くべきだと思う。」

「うん、しない。でも受け入れることはできるでしょ?わたし、皆さんを取り巻く問題に何もできない。でもせめて弱音を吐く自分を、その人をそのまま受け入れる居場所になりたいの」

 

弱音を吐いていい。解決しなくてもいい。弱音を吐くあなたをまるごと受け入れたい。これが寅子の優しさであり強さなんだなと思った。

 

このドラマは戦ってきた女性を描いていると思っていたけれど、戦うことができない女性の苦しさもちゃんと掬いあげているし、戦おうとする女性のことを邪魔せず見守ったり応援してくれたりする戦わない男性の良いところも丁寧に描写されている。優しさを感じる。

 

オープニングを初めて見たとき、伊藤沙莉さんが出演していた伝説のドラマ「女王の教室」のエンディングを彷彿とさせるようなダンスに感動した。彼女は昔からわたしの好きな女優のうちの一人なんだけど、小学生だったのにもう主演をやっているんだと親戚のおばさんのような気持ちになってしみじみした。実際は妹くらいの年の差なのだけれど。

 

脚本を調べたら、テレ東のドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」の脚本家だった。このドラマは原作とは登場人物の設定を少しずつ変えていて、ただのBLとして消費させないぞということが所々で感じられた。ドラマなりの解釈があまりにも優しく素晴らしくて、実写化としてお手本のようだと感動した作品だったので、こりゃ朝ドラも期待できるぞ!と嬉しくなった。

 

そしてやっぱり主題歌が抜群に良い。何度聴いても良い。朝に聴くと、寅子のようにずんずんと進んで行きたいなという気持ちにさせられる。カラオケにもう入ってた。何度でも歌いたい。誰かカラオケ行こう。平成ソングだけじゃなくて最近はYOASOBIとかも歌うぞ。本気で言ってる。DMください。

 

最後に。涼子さま、貴女は美しい。これを人は愛と呼ぶのかもしれない。好きです。安野モヨコ作画のような涼子さまの綺麗なお姿、お着物、綺麗なお顔を眺めている時間がわたしにとって生きる喜びです。